エイプリルフール

「そういえば、世間一般はエイプリルフールらしいね」
 夜夢さんが本の休憩にやってきた談話室でミルクティーを飲みながら二人に話かけてきた。
「そうですねー」
 芽来が答える。
「夜夢さんも誰かに嘘をついたりするんですか?」
 芽来がいれてくれた紅茶を飲みながら翔央は、夜夢さんが嘘をつくとしたら猫仲間かなぁ。等と考えを巡らす。
「いや、いつも嘘をついているワタシだからこそ、今日は嘘をつかないで過ごそうと思う」
「なんでまた……」
 それよりも、毎日嘘をついていた事に驚きだ。
「つまりだ、今日1日本当のことを言う事で、それを嘘と認識させる。するとどうだろうか、自分が知っている事でも疑わしくなる。そうしたら、本当の事を知るために色々調べたりするだろう?」
 どうだ、スゴイだろう。といった感じで口の端を上げる夜夢。
「夜夢さんはちゃんと周りの人の事を考えているですね~。じゃあ、私は今日1日夜夢さんの世話をしない事にします。代わりに仁木くんのメイドさんになります」
「え?」
 一体何を言い出すのだろうかこの娘は、いいぞもっと言ってください。
「そ、それは困る! 芽来がいなくなったらワタシは……ワタシは!」
 優雅(?)に飲んでいた皿から顔を上げてまるで世界の終わりのような顔をする夜夢。
 本当に身の回りの世話は全て芽来にさせているんだなぁ、と翔央は思う。
「うふふ~。嘘です!」
「ほ、本当か? そ、それも嘘ではないだろうな!」
「本当ですって~」
 芽来の周りをぐるぐる回りながら、本当か? 本当ですって~ っと繰り返す二人を見ながら、自分に話題が飛んでこなくて良かったと思う翔央。
 だって、いくらエイプリルフールとは言え、親しい友人に嘘はつきたくないから。

片付け

「片付けってさ、メンドくさいよね」
 本をめくる音が聞こえる。
「それを今言いますか……」
 仁木翔央(にき しょう)は恨めしい目を言葉を発した夜夢(よむ)へ向ける。
 その視線に気づいたのか、帽子に半分以上隠れている顔を上げる。
「何か言いたそうだね」
「そりゃ言いたくもなりますよ。これだけ散らかしたのは夜夢さんでしょ?」
 翔央は周りを指差す。そこには大量に倒れた本の山が散らかっていた。それとゴミ。
 それを翔央は一人で片付けていたのだ。文句の一つも言いたくなる。
「散らかした訳ではない。読み終わった本は確かに綺麗に積み上げていたのだけどね」
「積み上げるにも限度があるでしょう……」
 どうやら、本を読みたくて持ち出してきたは良いが、そのまま返さずに積み上げていたようだ。
 そしてついに本の山が自分の重さで倒壊したと……。
「概ねそんな感じだね」
「ちゃんと1冊1冊読み終わったら、返してくれれば良いんですよ!」
「やだ、メンドくさい」
 翔央に言われることを予め分かっていたのか、返事は早かった。
「それにワタシの部屋に入る代わりに何か1つするって約束をしたじゃないか」
「そりゃそうですけど、こんなに散らかっているとは思いませんでしたよ」 
 翔央は夜夢に「ワタシの部屋に来るかい?」と聞かれ即答した自分を恨んだ。
 確かに部屋に入る代わりに部屋の掃除を頼まれたが、普段の生活や外見からそこまで散らかっていないと思っていたのだ。
「先入観って怖いね」
「ボクはむしろここまで散らかせる夜夢さんの方が恐ろしいです」
 翔央は夜夢を見下ろしながら言った。今のスペースのメドがついたので、別のブロックの本を片付けにかかる。
「あー、もう。ゴミぐらいちゃんとゴミ箱に入れてください」
 床に落ちているゴミをゴミ袋に入れながらついつい愚痴を言ってしまう。
「ゴミを棄てる時にゴミ箱が近くにないから、そこら辺に棄ててしまうのは仕方ないんじゃないかな?」
 メンドくさいから、そう聞こえた気がした。言わなくても絶対そう思っているはずだ。
「その帽子の中にでも入れてください」
「この帽子は由緒正しい帽子だからね。そんな事には使えないのだよ」
 帽子を頭の上で器用に回しながら答える夜夢を見ながら、何を言っても無駄だと理解した。
 でなければ翔央をこの部屋に入らせることはしないのだから。
 掃除は翔央の仕事。本を読むのは夜夢の仕事のようだった。

「っと、すみません。この本その机に置かせて貰っていいですか?」
 翔央が大量の本を抱えながら夜夢の机に向かってくる。
「む、他に置き場所がないのなら仕方ない。良いよ」
 翔央には目もくれず答える。そしてどんどんと束が机の上に置かれ出す。だんだんと夜夢のスペースが無くなってくる。
「おい、翔央。ワタシの居場所がなくなっているんだけど?」
 ついには本を読むスペースも確保できなくなった。
「我慢してください。あと少しで終りますから」
 翔央のその声を聞いて、「じゃあ、あと少しだけだからね」と返す。

 ―そして夜夢包囲網がいつの間にか完成していた。

「翔央ー! 出られない!」
 夜夢が本の間から声をかけてくる。
「もう少し待ってください」
 翔央は最後の本の山を作る。ジャンルごとに分けたので思ったより時間がかかってしまったようだ。
 これが終わったら、ようやく床の掃除が出来る。夜夢にはもう少しだけ我慢しててもらうが、置き場が無いのでは仕方ない。
 翔央が掃除機を取ってこようと腰を浮かせる。
「もうダメだー!」
 そう声が聞こえた。嫌な予感がした。
 振り向くと夜夢が本の間から出ようとして大ジャンプを試みたところだった。
「わっ、夜夢さん。ダメですよ! 崩れます!」
 だが、時既に遅し。夜夢が本の上に足をかけると同時にそれまで危ういバランスだった本の山が崩れる。
 周りの本を巻き込んで、もちろん夜夢も巻き込んで……
 最後に残ったのは雪崩の後にポツンと立っている翔央と本の中で目を回している黒猫だけだった。
「ネコは閉所にいても大丈夫だと思ったんだけどなぁ……」
 翔央は嘆息しながら、夜夢の救出に乗り出すのだった。

 それ以降、定期的に翔央が夜夢の部屋に入る事を許されるようになった。
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